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よもやま情報館
弱小病院の被災下の現実2
阿蘇立野病院 理事長 上村晋一
前回に引き続いて2016年4月14日および16日熊本地震被災時の思い出したくもなかった立腹案件の2つ目です。
3回に分けて全職員に病院の休止と解雇を告げた日以降、マスコミから取材を申し込む電話が相次ぎました。「それでは病院は閉院ということですね?」と問いかけられる度に、休院であり閉院ではなく再開ありきで、あくまでも一時的に休止するだけであることを強調し、正しい報道をしてくれるようにと念を押していたつもりでした。忘れもしない5月7日の朝、妻の一言「あなた!閉院することにしたの?!」。びっくりして地元紙を見ると一面トップに「阿蘇立野病院 閉院へ」。
「はあ?!」。あれほど言ったのに!!それからその日は携帯が鳴り続け、対応に嫌というほど時間を要したことはいうまでもありません。その地元紙の他の記者とはその後もやりとりは続けましたが、購読は辞めました。たとえ地元紙1対1のマスコミ取材でも正確な報道を期待するのは困難なことがよく分かりました。しばらく経って地元紙とのコネをしっかり作っておけばよかったとか、あの時は医師会との合同の記者会見を開催すれば良かったのではないか等と色々思い巡らしました。当時はface bookで情報発信していましたが、当時はその記事に対するコメントはスルーしました。それ以外にやるべきことが数多あり、ネガティブな事に対してエネルギーを注いだり、攻撃的な気分になるのを意識して極力避けていました。今では当時とは比較にならないほどSNSも普及し、インフルエンサーと呼ばれるタレント?のコメントも大きな影響を及ぼすようですが、果たしてどういう対応がベターなのでしょうか。
去る2024年9月末に全日本病院学会in京都が盛大に開催され、29日には広報委員会の「SNSは本当に必要か?~病院を生かせる次世代広報のカタチ~」という委員会企画が開催され、目からうろこでありました。SNSは病院広報に無くてはならないことがよく理解、納得できました。また、地元であれほど「くまモン」という有名なゆるキャラがいながら、それが重要な広報戦略であるという気付きもいただきました。さすがに当院のゆるキャラが地震関連ネタになるにはもう少し時間がかかりそうですが・・・
今後は、災害時のSNSについても目からうろこ的な効果的発信等の研究発表があれば是非聴講したいと思っているところです。